管理規約改正時にいわゆる「民泊」や「シェアハウス」についての条項を検討される管理組合さんからの相談が増えています。
戸建にしてもマンションにしても空家問題が深刻化している昨今、空家の有効活用策として期待されている一方、多くの問題も抱えていますので慎重に検討することをお勧めします。
中には、組合に無断で「見切り発車」してしまう区分所有者も現れることでしょうから、
問題が発生してからではなく、その前にどうするかを管理組合で協議して合意しておくことが、管理組合運営を円滑に行っていくことに繋がります。
☆民泊
全国的には民泊を禁止するマンションの方が多いようです。
ではなぜ、禁止を検討するマンションが多いのでしょうか?
◇不特定多数の人が頻繁に入れ替わり出入りし、治安が心配!
◇エントランスの暗証番号が外部の第三者に漏れ、セキュリティ面が心配!
となるだけでしょうか。
民泊を利用する人の多くは海外からの観光客です。部屋の中での過ごし方(騒音、臭気、振動など、平穏な住環境を破壊するニューサンス問題)やゴミ捨ての習慣が日本とは大きく異なる事が多く、住民との間でトラブルになっている事例も多発しています。
国交省提示のマンション標準管理規約では、「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」と定められています。又 同じく区分所有法では「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」と規定されています。
この文面だけを見ると、
民泊も住宅だからいいんじゃない?
共同の利益に反しなければOKじゃない?
といった具合に、都合のよい解釈をされてしまいがちです。
国交省は、トラブル防止のためにさらに、「民泊」を分譲マンションで行う場合はマンションごとに定めている管理規約でその可否を規定する必要があると述べています。
曖昧な解釈ができないように管理規約で禁止するのか許可するのか明記することが紛争を起こさない鍵となります。
2016年11月11日、国土交通省はマンションでの民泊の扱いを禁止する管理規約の明示例を発表しました。この通知は国土交通省住宅局長から特区民泊を管轄する地方自治体向けに通知したもので、この中の例示ではあくまで特区民泊のみを禁止する形になっており、特区民泊のない地域では、あまり意味のない形になっています。
2017年6月9日に「民泊新法」といわれる「住宅宿泊事業法案」、いわゆる「民泊新法」が成立しました。「民泊新法」は、訪日外国人旅行者が急増する中、多様化する宿泊ニーズに対応して普及が進む民泊サービスについて、その健全な普及を図るため、事業を実施する場合の一定のルールを定めたものです。このルールに則っていれば、マンションでも合法的に民泊が行えるというものです。
国交省では、民泊新法が2018年1月に施行されることもあり、トラブルの最小化を目的に分譲マンションで「民泊を認める場合」「民泊を認めない場合」それぞれの管理規約案の提示を検討しているようです。
なお、管理規約の改正には特別決議が必要となります。規約の改正には入念な下準備と事前の合意形成が欠かせません。当NPOでも文言を各種用意しています。
まずはご相談ください。
☆シェアハウス
マンションの一住戸を簡単な壁で区切って多人数に貸し出すことについて、火災等安全面で大きな問題となった事例があります。国土交通省住宅局は2015年9月、「事業者が運営するシェアハウスは寄宿舎とする」という技術的助言を公表しています。
シェアハウスは、学校・病院・旅館などと同様に防火上主要な間仕切り壁を準耐火構造とし、天井裏に達するようにしなければならない、など様々な建築基準法が適用されます。改修しなければ、マンション法だけではなく、建築基準法違反となります。改修の手続きとして一般に管理組合への申請と許可が必要となります。
シェアハウスも民泊と同様、管理規約でその可否を明確に規定することが肝要です。
下記判例もご参照ください。
民泊の判決(毎日新聞2017.1.14)
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